塞王の楯 第166回 直木賞 受賞作

「最強の楯」×「至高の矛」

近江の国・大津城を舞台に、
石垣職人“穴太衆”と鉄砲職人“国友衆”の宿命の対決を描く
究極のエンターテインメント戦国小説。

『童の神』(直木賞候補)、『八本目の槍』(吉川英治文学新人賞受賞)、
『じんかん』(山田風太郎賞受賞・直木賞候補)、
「羽州ぼろ鳶組」シリーズ(吉川英治文庫賞受賞)の今村翔吾が贈る話題作!

INTRODUCTION

今村 翔吾 撮影/佐賀章広

1984年、京都府生まれ。
デビュー作「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」で第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。
「童の神」で第160回直木賞候補、第10回山田風太郎賞候補。
「八本目の槍」で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。
「じんかん」で第163回直木賞候補、第11回山田風太郎賞を受賞。
「塞王の楯」で第166回直木三十五賞を受賞。
また、講演、テレビなどに出演のほか、2021年11月には大阪府箕面市にある書店を事業承継し、オーナーとなるなど、幅広い活動を行なっている。

INTERVIEW

『塞王の楯』のルーツをさぐる!
今村翔吾さんが『塞王の楯』と
「滋賀県」のかかわりについて

語った初のロングインタビュー。
作品誕生のきっかけや
県内ゆかりの地や見どころなど

ここでしか聞けない内容が満載です!!

GO AROUND

『塞王の楯』の舞台となった滋賀の名所旧跡や、著者のおすすめスポットをご紹介!
読んでめぐって、『塞王の楯』の世界をご堪能ください。

  1. 01

    大津城跡

    豊臣秀吉によって築城された城。本丸は当時の琵琶湖岸に面し、港の機能も担っていたと伝わる。1595年(文禄4年)に京極高次が城主となり、関ヶ原の戦いの前哨戦・大津城の戦いでは大軍を食い止めたことでも有名。関ヶ原の戦い後は廃城となり、現在その遺構はほとんどないが、京阪電車「浜大津」駅から山手側に10分ほど歩いたところにある大津祭曳山展示館の裏に外堀の石垣がわずかに残っている。また駅の歩道橋を琵琶湖側に降りたところには大津城跡の石碑がある。

    著者おすすめポイント

    滋賀県で一番印象に残っているのはやはり大津城跡ですね。そこに立ったとき、ここで物語が繰り広げられていくのを感じました。実際にあった戦いに思いを馳せて、城の高さや規模を想像しました。そして、その当時から変わっていないもの、例えば比叡山や比良山を見る。当時からすれば今はいろんなものにさえぎられて見えないものも多いんですけど、その地から見た月だって僕はインスピレーションがわいてくる。物語の地に立つことって、僕にとってすごく重要なんです。

  2. 02

    穴太衆(あのうしゅう)の本拠地・坂本

    安土城築城の堅固な城壁をつくったことでも有名な穴太衆は、比叡山延暦寺の門前町・坂本を拠点とする石工集団。坂本の町には比叡山上で修行を終えた老僧が余生を過ごした「里坊」と呼ばれる坊舎が50ほどあり、いずれも「穴太衆積み」と呼ばれる自然石を巧みに積み上げた石垣がほどこされている。緩やかな坂本の傾斜地に沿うように素朴な石が積まれた美しい風景だが、その堅牢さは城レベル。石を知り尽くしたプロ集団による優れた技を今に伝えている。

    著者おすすめポイント

    坂本の町にある石垣は「野面積(のづらづみ)」といって、穴太衆が最も得意としていた石積みなんです。よくお城などで見る石同士がぴったりとおさまった石垣よりも穴太衆が作ってきた自然石による少し隙間があるような石垣のほうが圧倒的に耐久性が高いんです。しかも自然の石を絶妙なバランスで組み上げるのは日本だけの技術。だからほんものの職人技を間近で見てほしいですね。雨に濡れた石積みもまた表情が変わって面白いですよ。散歩にもおすすめです。

  3. 03

    琵琶湖、海津からの眺め

    琵琶湖は、およそ400万年の長い歴史をもつ日本最古にして最大の淡水湖。その北西部にある海津は、もとは京都や奈良などと北陸を結ぶ西近江路の宿場町で、湖上交通の要衝としても栄えた町。湖岸沿いの県道には約4kmにわたって800本ものソメイヨシノが湖面にせり出すように咲き誇ることでも有名で、日本の桜名所100選にも選ばれています。

    著者おすすめポイント

    季節、時間などによって多様な表情を見せてくれる琵琶湖が好きです。だから一度琵琶湖に行って見た気になっていてはダメだよと観光客の人たちに言いたいですね。さまざまな場所から見る琵琶湖の良さをぜひ体験してほしいと思います。個人的には湖西から琵琶湖越しに見る日の出や、海津から見る琵琶湖が好きです。特に桜の季節の海津はきれいですね。北から見た琵琶湖はまた違う顔をしていますし、近くには「賤ヶ岳の戦い」の賤ヶ岳や余呉湖もあるのでおすすめですね。

  4. 04

    ふなずし

    塩漬けにした魚と米を漬け込み発酵させた日本の伝統食「なれずし」の代表格で、滋賀県ではフナを使うことから「ふなずし」という。各家庭で作られていた郷土料理で、主にハレの日などの慶事で食べたり、五穀豊穣を祈る祭礼に神饌として奉納されてきた。また、その高い栄養価から、体調不良時に薬代わりとして食べられていたことも。近年はその独特な酸味、塩味がワインなどのお酒に合うことから、チーズやパンなどと組み合わせた商品も出てきている。

    著者おすすめポイント

    最初食べた時は、ぶっちゃけ苦手かなと思ったのですが、その後、別のふなずしを食べたら美味しいと感じたので、同じ作り方でもご家庭やお店、会社によって味がさまざまなんだと感じました。香り、酸味、塩味が複雑に絡み合った発酵食品ですから、人それぞれ美味しいと思うポイントも違いますしね。だから今、苦手と感じている人も、試しにいろいろなふなずしを食べてみると好みのふなずしに出合えるのではと思います。ぜひトライしてほしいですね。

  5. 05

    国友鉄砲ミュージアム

    室町末期の鉄砲伝来以降、国友の鍛冶職人によって鉄砲が作られ、織田信長をはじめ多くの戦国武将からの注文を受けていたと伝わる。国友鉄砲ミュージアムでは、かつて日本の戦に多大な影響を与えた国友鉄砲の歴史や製造の過程、道具などを実物や映像などでわかりやすく紹介するとともに、連発式空気銃や距離測定機、天体望遠鏡などを作り、日本初の天体観測をおこなった東洋のエジソン・国友一貫斎(1778~1840)の業績も伝えている。

    著者おすすめポイント

    国友鉄砲ミュージアム、僕も行きました。2階の大展示室にあった火縄銃体感コーナーでは実際に火縄銃を持って重さや触り心地を体験できたことが印象に残っていますね。自宅にも火縄銃のレプリカがあるんですよ。もちろん撃てませんが、全く同じ尺度のものなので銃を持った感触や構えた姿、目線など、作品の参考にしました。